「有難い(ありがたい)」という言葉

校長 金山 達也

 

東京デフリンピック2025(11月15日~26日まで)が開催されていたのは、ご存知でしょうか?デフとは、音が聞こえない、または、聞こえにくいという意味の言葉で、そうしたアスリート達のためのオリンピックが開かれていました。パラリンピックは聴覚障がい以外のアスリートも参加できますが、この大会は聴覚障がいをもつ方だけの競技大会です。例えば、サッカーなどのホイッスルの音は当然聞こえづらくなります。そのため、通常の競技とは少し工夫が必要となります。ホイッスルを吹く場面では、審判は必ず選手が見える位置で、旗を振って合図をしたり、また、陸上競技のスタートでは、選手一人ひとりのコース上にライトがおかれ、スタートの合図を光で伝えたりするなどの工夫が各競技でなされるそうです。

このことを知った時、4年前の東京パラリンピックに出場したマラソンの道下美里選手(視覚障がいをもつアスリート)が話していた「難が無いのは無難な人生、難が有るからありがたい」という言葉を思い出しました。困難なことが多ければ多いほど、苦労はしますが達成感や満足感はその分、何倍も大きくなります。または、何事も無く無事にできれば、それに越したことはありません。しかし、生まれつきや事故などで障がいや後遺症と闘っている人たちは、世界中にたくさんいます。この方たちのことを思うと困難をありがたいとは思えない自分がいます。ただ、何をやってもうまく行かないことやどんなに努力してもできないことを、悔やんでも仕方がないと感じたことを覚えています。困難なことにも地道な努力で立ち向かう(できるかどうかという結果ではなく、目標達成に向けて取り組もうとする姿勢)ことの大切さを教えてもらった気がします。

私自身、我が子に対して、できれば無難な人生を送ってほしいと願っていましたが、困難な状況は生きていく中でたくさん遭遇します。困難から逃げられないとすれば、前向きに考えることがより大切になってきます。その困難に立ち向かうための原動力になるのはやはり「気持ち」です。困難が有るとわかっていれば、事前に準備して対応ができる、気持ちのゆとりもできる、何より自分自身が成長できる・・・ありがたい。そんな気持ちの持ち方も大切だと思うのです。

簡単にはできないことがあるのが人生、逆にそれを乗り越えられたとしたら、喜びや成長の度合は何倍にもなる・・・そんな前向きな気持ちをもって、人生を歩みたいものです。


 

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